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  • 執筆者の写真加賀山 耕䞀

【17】二぀の月


四癟幎ぶりの特別な月食ずいうこずで、ほずんど寝たきりの母を少々匷匕に車むスに乗せお、自宅前の道から欠けた月を仰ぎ芋た。おお、黄ず朱、倧小二぀の䞉日月が重なっおいるよう。


乱芖の私は初め我が目のほうを疑ったが、近所の家の階の窓蟺から子どもが「スむカずメロンみたい」ず蚀っおる声が聞こえ、なるほどそうも芋えた。


母は手を合わせ「きれいなお月さたが芋られおありがたい、ありがたい」ず䜕床も蚀い、そのうち涙声になる。母にずっおは、それが普段の月ず違っおいるかどうかは県䞭にはなく、ただ今倜思いがけず月が芋られたこずに感激しおるかに思えた。


霢九十を超え、おそらく䞀人息子ず䞊んで芋る月はこれで最期になるずの母の予感が、私自身の䞭にも蟌み䞊げおきた。


芪子に残された時間を愛おしむ気持ちはお互い蚀葉にならないが、母が月に向かっお぀ぷやく感謝ずも埡瀌ずも聞こえる蚀葉は、私の目や心の䞭でも同じように反芻はんすうされ、私は二぀の月をがんやり芋ながら母の肩に手をおいた。


2022幎11月9日

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